継体天皇

古代史を解く『鍵』 門脇禎二・森浩一 学生社

丹後王国でおなじみの文献史学者の門脇禎二氏と、ヤマトを中心に考えない考古学者の森浩一氏の対談をまとめた本です。青龍三年鏡、地域国家、継体王朝の成立、氏姓制度、隼人熊襲蝦夷、古代の女性、木簡というテーマを基に様々な見方の意見交換をされている内容です。久し振りに面白い本を読んだというのが正直な感想です。森浩一氏の得意分野が多いせいか、森氏見方が強く現れている内容ですが、森氏がある内容を深堀するのに対し、門脇氏はそれを流れの中の一事象として捉えコメントを発せられています。考古学者が一つの遺跡にこだわり、文献史学者が歴史の繋がりにこだわるのか、それとも、森氏と門脇氏がそういう視点から分析する学者なのかは、わかりませんが、時に行き過ぎとも思われる森氏の意見を、さりげなく否定したり肯定したりしている門脇氏のやりとりは、読んでいて、個々の内容や着目点だけでなく、楽しむことができました。読んでいて突っ込みどころは多々ありましたが、それはテーマ毎に機会を見て歴史ニュースや古代史探求レポートでコメントさせていただきたいと思います。一読の価値ありと思います。(本の写真をクリックいただければ、アマゾンのショップに繋がります。)
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読みやすさ  ★★★★
着想の奇抜さ ★★★★
論理の力強さ ★★★★

大王陵発掘!巨大はにわと継体天皇の謎 NHK大阪 NHK出版

水野祐氏の「三王朝交替説」に従うなら、現代に続く皇室の真の祖先は「新王朝」を築いた継体天皇となります。応神天皇五世の孫と日本書紀に書かれた継体天皇は、あまりにも慎重に皇統を書いている日本書紀及び古事記において、非常に例外的な天皇であることは間違いありません。越前で育ち、尾張や近江をバッグにつけて大和朝廷を征した大王に興味は尽きません。これまでの天皇に較べて、この継体天皇の特異な点のひとつは、その墳墓が、大和でも河内でもなく、三島と呼ばれる現在の大阪府高槻市に築かれていることです。彼だけが従来の墓域から離れ、三島の地に葬られているのかは大きな謎の一つです。但し、三島と言っても、宮内庁の管理する太田茶臼山古墳ではありません。今や、全ての人が認める今城塚古墳です。発掘調査が許されている唯一の大王墓と言ってもよい今城塚古墳では、埴輪祭祀場が発掘され百三十体あまりの埴輪が見つかり復元されました。この本は、この埴輪祭祀場発掘の中で、なんとかして埴輪の持つ意味を読み取ろうとしたNHKの取材班の記録です。ただ、ああでもない、こうでもないと悩んだ割に、結局何もわからなかったというに等しい結論です。途中からは、水野正好氏の「埴輪論」が展開されているにすぎない内容になっています。埴輪は東日本古墳の特徴なのですが、詳細な比較がなされるでもなく、埴輪祭祀場に作られた4つの区画の中にある大きな家型埴輪の違いさへも分析されていません。報道とはここまでしかできないのかと、ちょっと残念に思いました。継体天皇陵や埴輪に興味のある方には、高槻市教育委員会が書いている吉川弘文館から出されている書物が一番有益な情報が得られると思います。(本の写真をクリックいただければ、アマゾンのショップに繋がります。)
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読みやすさ  ★★★★
着想の奇抜さ ★★★
論理の力強さ ★★

仁徳陵の被葬者は継体天皇だ 林順治 河出書房新社

古代史を趣味とする人は、なぜか信仰好きである。そして、特定の研究者もしくは作家を崇拝する傾向がある。これはなぜなんでしょうか。私の好きな作家(学者)の人達にも、多くの取り巻きがおりせっせせっせと講演会に通っている。まるで、祭祀のようである。祀り上げられた作家が発する神の声を聞こうとするのです。新興宗教のようで、ちょっと、気持ちが悪い。
この本の作者も信者の一人です。石渡信一郎という教祖様の言うことを、なんとかして伝導しようと頑張りますが、残念ながら読みにくい。もともと、無理がある理論のためでしょうが、応神天皇から論じるのか、継体天皇から論じるのかが定まっていないためだと思われます。
隅田八幡鏡の銘文の解読だけに焦点を充てた方がよかったかもしれません。この鏡の銘文にはロマンがあります。(本の写真をクリックいただければ、アマゾンのショップに繋がります。)
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読みやすさ  ★★
着想の奇抜さ ★★★
論理の力強さ ★