考古学が解き明かす古代史 古庄浩明 朝日新聞出版

編集が良く考えられていて、確かに「すらすら読める!」は嘘じゃない。
まったく考古学に興味のない人を惹きつけるには、良い本だと思いました。できるなら、中学生にこの本を読ませたい。
ただ、何か所か首をかしげたくなる箇所が存在しました。その一つが、「卑弥呼墓私論」。中山大塚古墳説。河岸段丘の上にあってというのはそうかもしれない。でも、普通の古墳は皆そうですが。川が氾濫するような場所に古墳は作りません。やはり、築造時期と名前から特定するというのは、ちょっとちょっと乱暴すぎます。邪馬台国の墓が前方後円墳であったなら、伊都国、奴国の墓も前方後円墳でなければおかしいです。
最後の言葉が効いています。「卑弥呼の邪馬台国は、古代史のロマンです。解き明かすことは不可能でしょうし、ときあかされないでほしい気もします。みんながそれぞれ解き明かそうと努力するところにこそ、ロマンといわれる所以があるからです。」
おい、おい。何言っとんねん。自信がないのなら、そんな説は、載せないでほしかった。
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読みやすさ  ★★★★★
着想の奇抜さ ★★★★
論理の力強さ ★★★

「反」日本史 須藤公博 講談社

副題「名門大学入試問題で知る」という副題がついている通り、駿台予備校の講師の方が、大学の入試問題から、最新の通説をどのように理解するかをまとめた本です。
一つ感じるのは、大学入試の問題がつまらない。奇天烈な説を取り上げて、それを入試問題にはできないでしょうけど、所詮は現在の高等学校の指導要綱がベースにあるわけですから、自ずと限界があるのです。
例えば、最初にとりあげられているのが、筑波大学の論述問題、「推古朝の政治と文化の特質について論述せよ」で、使用する語句が、厩戸皇子、三経義疏、蘇我馬子、渡来人。つまらん問題ですよね。私のように、聖徳太子がいなかった説ではなく、推古天皇いなかった説のものにとっては、それって日本書紀の嘘をそのまま書けと言う問題としか思えないのです。
問題とは大きく離れてしまいますが、解説というか、問題の窮屈さに対する説明の面白さが光ったのは、浅野内匠頭はなぜたった一時間の取り調べで切腹に?という、解説。視点の置き所はなかなかです。しかし、入試問題はやっぱりつまらなすぎ。こんな入試で選抜しているから、大学から世界を変えるような奴が出てこないのだと思います。クイズ王を入学させたい学校は、所詮二流の学校です。
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読みやすさ  ★★★
着想の奇抜さ ★★★★
論理の力強さ ★★★

日本史のツボ 本郷和人 文藝春秋

七つのツボを押さえれば、日本史がわかるという整理のもと、天皇、宗教、土地、軍事、地域、女性、経済という観点から、非常に短いコラムが寄せ集められた本です。
ツボ単位にまとめて、日本史の流れを整理してほしかったと思います。どちらかというと、雑学辞典のようになってしまい、それも、前後の関係性がないので、読み終わった後、何がいいたかったのかなと考え込んでしまいました。また、ここの雑学が、あまりにも薄い。それぞれを、原稿用紙2~3枚でまとめよという制限があったのでしょうか。
7つのツボと言われるが、逆にそれ以外にどのような視点があるのかと問いたくなります。それぞれのツボに新しい切り口が欲しかったと思います。せめて、個々の話に、原稿用紙
5~6枚分ぐらいのボリュームがあれば、引き込まれたかもしれません。
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読みやすさ  ★★★★
着想の奇抜さ ★★
論理の力強さ ★★

「日本書紀」の呪縛 吉田一彦 集英社新書

本と日本史というシリーズの第一巻です。日本書紀に書かれている詳細を検討しようという本ではありません。日本書紀という書物によって、何が生まれたか、何がかわったか、また、日本書紀の研究にはどのような歴史があったか、そして、日本書紀というものをどのようにとらえればよいのかという内容が書かれた本です。
日本書紀という書物の、副次的考察をまとめたものと言えばいいのかもしれません。驚くべきような情報はないのですが、こういう本はなかったために、私には新鮮な感覚がありました。
それぞれの内容が、簡単に整理されていて、読みやすくもありました。また、簡単にまとめるために、作者の断定になっているのですが、いくつかのポイントで、「うーん、それはどうかな」という感想も持ちました。
欲を言うなれば、日本書紀があることで、これだけ世の中が変わったという指摘が欲しかったと思います。この本がなかったなら、どのように歴史は変わったかを言って欲しかったと思います。
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読みやすさ  ★★★★
着想の奇抜さ ★★★★
論理の力強さ ★★★

日本書紀はなにを隠してきたか 遠山美都男 洋泉社


私は、日本書紀は、なにかを隠そうとした書物ではなく、理想の日本の歴史として描かれた書物であると認識しています。従って、意図的に隠された内容はなかったと思いますが、それまでに残されてきた歴史的な記録が書き換えられた内容は多々あったと思います。
着目された内容は、聖徳太子、大化改新、壬申の乱、女帝の時代、その他では白村江の戦い、蘇我物部戦争、騎馬民族渡来説、卑弥呼など、非常に注目度の高い箇所を取り上げ、問題点をうまく整理されていると思います。ただ、残念ながら新説はなく、これまで言われていることを纏め上げたものと言う内容になっています。
テーマの取り上げ方は面白いと思いますし、読みやすくまとめられていることも確かです。「そうなんだけどね」というのが、私の感想です。
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読みやすさ  ★★★★
着想の奇抜さ ★★★
論理の力強さ ★★★