呪の思想ー神と人との間 白川静・梅原猛 平凡社


学者、特に、歴史を研究する人は哲学者にならなければならないのかもしれません。考えて、考えて、考えて、それでも考えて、出て来た回答に納得する。その繰り返しが、自らの学問分野を体系化し、新たな学問分野を生み出すのかもしれません。梅原猛は皆さんご存知だと思います。私は、思想家だと思っている人物です。白川静は、ご存知でしょうか。中国古代文学という領域があれば、その権威ということになるのかもしれません。甲骨文字を分析して、漢字の成り立ちや意味を極めた唯一の人と言ってもいいのかもしれません。実は私も、この本を手にする迄知らなかった人物です。甲骨文字や漢字が出来た時代の中国を勉強しつくして、その意味を探るという、とんでもないことをやってのけた人物です。そして、この本の至る所で出てくるそれぞれの漢字の意味の話は、本当に面白かった。驚きと、「なるほど」の連続でした。本文は3つのテーマで構成されており、2番目は「孔子」です。孔子という人物に対しては、ほとんとイメージがなかったのですが、なんとなくつかめたという印象です。3番目は、「詩経」についてです。正直、この内容についていけるほど、私には中国文献の知識や読み込みもありません。それだけに難しかった。ただ、中国という舞台だけでなく、一連のものとして日本との比較、日本への影響分析が出てきます。これはためになりました。中国古典をじっくり読まれた方なら、きっと、たまらなく面白い本なのだと思います。「呪」というものに関して、日本もそうですが、中国においても人の行動・思考の根源であったのだということは理解できました。また、「呪」というものに対する偏った理解をしていたことも認識できました。(本の写真をクリックいただければ、アマゾンのショップに繋がります。)
Pasted Graphic 4

読みやすさ  ★★★
着想の奇抜さ ★★★★★
論理の力強さ ★★★