前方後方墳の謎 植田文雄 学生社

前回「考古学教室」を紹介してから、「考古学を知るのに最も分かりやすい教科書は何?」という質問をいただきました。いろんな本があるのですが、私が必ず紹介するのが、この本です。何と言っても読みやすいし、分かりやすい。この植田さんという方の「前方後方墳」に対する思い入れがひしひしと伝わってくる、とても良い本だと思います。前方後方墳だけわかっても……. ご心配なく。古墳がどのように遷移したのか、古墳をどのようにして作るのか、そして、古墳をどのようにして見分け、どのようにして計測するのか。という全てが書かれています。そのための、土器の見分け方も書かれています。いたるところに散りばめられている、個人的な歴史観もなかなか面白い。狗奴国にまで突っ込んでいますが、「そうかもしれない」という説得力もある。まずは、読んでみてください。読んだ後、「神郷亀塚古墳」をとにかく見てみたくなりますが、実際行くと、ちょっとがっかりします。考古学とはそんなものだと思います。(本の写真をクリックいただければ、アマゾンのショップに繋がります。)
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読みやすさ  ★★★★★
着想の奇抜さ ★★★★
論理の力強さ ★★★★

入門者のための考古学教室 山岸良二 同成社

考古学というのは、ちょっと片意地を張ったところのある学問です。まず、古代から伝わる史書というのを信じない。少し言い過ぎかもしれませんが、そんなところのある学問です。では、何を信じるかというと、実際に目にするもの、発掘されたものです。その情報を集めて、体系化していくというのが考古学です。ですから、考古学を俯瞰的に説明するというのは難しいのだと思います。
この本は、歴史に興味はあるけど、考古学の「こ」の字も知らないという読者を対象として書かれているようです。日本原人から奈良時代あたりまでを200頁程度にまとめるのですから、仕方がないのですが、どうしても表層的で特異な事象に偏ってしまいます。こんな見方もあるんだということを知るには良いのかもしれません。この本で何かを得ようとするのでなく、歴史への取り組みの一歩として活用してもらえればと思います。(本の写真をクリックいただければ、アマゾンのショップに繋がります。)
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読みやすさ  ★★★
着想の奇抜さ ★★
論理の力強さ ★