日本海

環日本海謎の古代史 清川理一郎 彩流社

日本の古代史を語る時、非常に残念ながら多くの人が日本史の中で物を見て考えておられる。もちろん、そういう視点は必要なのですが、国境がなかった時代、アイデンティティの違いが認識されていない時代において、現代の日本の範囲に留まらず、もっともっと大きな視野で見る事は大切な事だと思います。少なくとも、朝鮮半島と中国は必須であると考えます。私がこの本を手に取ったのは、邪馬台国を作った瀬戸内海を中心にした一族とは別に、日本海を中心に交易をしていた一族がいたはずという強い思いがあるからです。しかし、作者の視点は、インド・ヨーロッパの民族が移って来た、また、インダス文明と関係があったなど、最早都市伝説をも越えた空想世界になってしまいました。神社に祀られている神の時代(私は、古くとも弥生後期の頃だと思いますが)と、縄文もしくは先史時代とが混同されて論じられているために、その間のつながりがまったく飛んでおり、残念ながら説得力はありません。例えば、宇佐神宮に「日本列島が大陸と繋がっていた時代にすみついたプロト宇佐族」なる人々が、「縄文時代に製鉄を行い」「九州大学はそれを秘匿している」という論理から、応神天皇や宗像大社を論じようというのは、最早お話になりません。「大陸と繋がっていた時代」には、1500万年前です。考えられるとすれば、氷河期に氷の上を歩いて渡って来たのかもしれませんが、それでも1万年前ぐらいです。製鉄?何を作ったのでしょうかね。本に中で、唯一可能性があるのは、シュメール文化との関係です。私の知人の何名かの方も言われています。ただ、その人達は、「シュメール文化の影響を受けた高句麗の影響で」と言われています。(本の写真をクリックいただければ、アマゾンのショップに繋がります。)
Pasted Graphic 4

読みやすさ  ★★★
着想の奇抜さ ★★★
論理の力強さ ★