思想史

「かたち」の謎解き物語

この作者の方は、建築工学の先生です。「なぜ夢殿は八角形か」という本を書かれていたのですが、八という数字の謎だけでなく「形」全般、数字全般にわたり書かれたのがこの本です。最初から最後まで基本となり、この本を貫いているが、古代中国神話に登場する中華民族人文の始祖として崇拝される伏羲(ふっき)と人類を創造したとされる女神の女媧(じょか)です。伏羲(ふっき)は、手にコンパスをもっており、女媧(じょか)は手に定規をもっています。つまり、伏羲(ふっき)と女媧(じょか)は、このコンパスと定規で万物を造り出したとされているのです。そして、その象徴が○であり□の形であると言われます。この2つにより全ての形が表されるのですが、本の中では三番目の神として神農は数字の3の神、そこから△という形が説明されます。陰陽道が多用されますが、それは日本人の生活に密着しているからかもしれません。他、道教をはじめ世界中の思想が語られます。そこで、私はカテゴリーとして思想史の中に入れてみました。ある意味面白いのですが、非常に物足りないというのも事実です。確かに、形や数字はいろいろな意味を持ち、つながりがあるのですが、根本的になぜ、その数字なのか、なぜその形なのかが書かれていません。例えば8。我が国の最初の和歌は、「八雲立つ出雲八重垣妻ごみに八重垣作るその八重垣を」。伏羲(ふっき)は陰と陽の3つずつの組み合せ8種類からなる八卦を考案し、東西南北その中間の八方向に広がる八紘一宇(はっこういちう)の宇宙の運命を予言した。確かに日本人は八島大国といったり、八百万の神と言ったり「8」を重んじるようになりましたが、それは「八卦」が元になった物なのでしょうか?そんなに大切なら、どうして8進法を使わなかったのでしょうか。8の持つ意味はなんだったのか、どうして8を重んじたのか、他の数字は8との違いをどういうふうに理解されていたのかなどの、本質的な情報がありません。この本から、話のネタは提供できても直に忘れてしまいそうです。(本の写真をクリックいただければ、アマゾンのショップに繋がります。)
Pasted Graphic 4

読みやすさ  ★★★★
着想の奇抜さ ★★★★
論理の力強さ ★★