日本古代史を科学する 中田力 PHP新書


非常に鼻につく様に感じるのは、断定口調が多いせいでしょうか。自然科学の論理と手法を用いない人文科学なる物は2流の学問であるという論調でまくし立て、自分が推定する邪馬台国宮崎説に対しては「どの様な権威者がどの様な詭弁を使ったとしても、「魏志倭人伝」を前提とする条件を設定する限り、理論的にこの結論を否定できないのである」なのだそうです。私に言わせれば、「誰も否定しきることはできないかもしれませんが、誰も肯定することができない説」だと思います。
科学と言いながら、次に出てくるのは(自分で行ったのではない)DNAの解析結果からの、弥生人がどこから来たのかの推論です。科学と言うのであれば、もう少し、DNAの分析結果をクラスター分析か何かを使って、説得力のある説明をしてもらいたかったと思います。後半の、出雲と四王朝説に至っては、最早、科学でもなんでもない。中国史の大きな流れだけの上での作者の空想でしかありません。科学はどこに行ったのでしょうかと言いたくなりました。(本の写真をクリックいただければ、アマゾンのショップに繋がります。)
Pasted Graphic 4

読みやすさ  ★★★
着想の奇抜さ ★★
論理の力強さ ★★★