触穢の成立 大本敬久 創風社出版

「新しい本の書評も入れてほしい」という声を受けて、今年発行された本からのご紹介です。この本は、「本は誰のために書くのか?」ということを改めて考えさせてくれる本でした。テーマ自体は、非常に大切な課題ですし、面白いと感じます。「ケガレ」という言葉は、多分日本独自の物なのではないかと思います。「ケガレ」は、「ケ枯れ」すなわち、「気枯れ」であるという引用迄は良かった。また、「穢」が「きたない」と訓読みされていたこともよかった。しかし、そこで終わってしまいました。「穢」が名詞となることが本として一冊に表すべきことだとは思いません。それ以上に、「汚い」と「穢い」はどのように違うのかが知りたかった。「ケガレ」という観念が、平安貴族により作られたものであることも、仏教の影響を多く受けていることも人々は気がついています。しかし、「ケガレ」がどうやって生まれたのか、また、なぜ「汚い」と字を分けたのかはわかりません。「穢」という字はのぎへんですが、稲や農業に関係がある字であるはずなのに、どうして「ケガレ」なのかというようなことが知りたかった。「そういうことが知りたいなら別の書に」と言われるなら、日本古代における「穢」観念の変遷という副題はどんなものでしょうか。本は自分のためでなく、読者を意識して書いてほしいと思います。(本の写真をクリックいただければ、アマゾンのショップに繋がります。)
Pasted Graphic 4

読みやすさ  ★
着想の奇抜さ ★★★
論理の力強さ ★