古代遺跡謎解きの旅 松本司 小学館


筆者は、現代の風水師と呼ばれる方のようです。風水もしくは
堪輿(かんよ)と呼ばれるものは、割と新しいとされていますが、陰陽五行説として確立される前においても、中国では古代から占いの術として、巒頭(らんとう、天地のこと)と呼ばれる天文知識と合わせて地形を読破する術があったとされています。元をたどっていくなら、「易経」などの知識から派生したものと思われますが、そのとっかかりは伏羲(ふっき)などまで辿り着くのでしょうから、そうすると、紀元前3000以上前から熟成された知識であると言うことができます。ただ、これらの知識がいつの時代に正式に日本に入って来たのかは、非常に不確かでありますし、私としては遣唐使の後になるのではないかと考えています。そうすると、本書では、出雲や纏向、藤原京などを風水によって分析されているのですが、藤原京はともかく、出雲や纏向にどれぐらいそのような考え方が生かされていたかは非常に疑問ではあります。
とは言う物の、卑弥呼は「鬼道」を操ったわけですし、出雲も銅鐸文化などが持ち込まれていたわけですから、そこにはなんらかの占術が確立されており、少なくともそれは、太陽の動きや天の動きと無関係ではなかったと考えています。本書では三内丸山遺跡も出てくるのですが、それも太陽の動きを抜きには語れないとは思います。
全体を通して、正直わかりにくい。たくさんの線がひかれ、菱形や正方形が出てくるのですが、菱形になっていなかったりして、理解に苦しむ点が多々有ります。筆者は自分の中で納得されているのかもしれませんが、もう少し、風水の発想の根源のような内容から出雲や纏向は立地を説明してほしかったと思います。読者がちょっと置いてきぼりになってしまいます。ただ、山岳信仰が存在し、太陽の動きを考慮した場所、そして、経験則から学んだのでしょうが地理的な共通要素は出雲や纏向には存在すると考えます。そのとっかかりをつかんでいると言えば、そうかもしれないと考えます。本書では取り上げられていませんでしたが、同じ地形的な発想は、原田大六氏が発掘した平原遺跡にも見られます。
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Pasted Graphic 4

読みやすさ  ★★★
着想の奇抜さ ★★★★
論理の力強さ ★★