記紀の考古学 森浩一 朝日文庫

今年最大の損失は、何と言っても「古代学」の提唱者である同志社の森先生を失ったことではないでしょうか。三角縁神獣鏡の国産説など、非常に丁寧な視点で物事を分析され多くの学説を提唱されました。松本清張氏の師でもあった方です。
今回紹介させていただくのは、「日本神話の考古学」に次いで出された「記紀の考古学」です。本当に博学だなーと感心するとともに、資料をこんなに丁寧に読むんだと教えられる書でもあります。名前、地名、用語は、一つ一つ丁寧に解説しながら読み進められます。読み進めていくと、断言して欲しくなる箇所もたくさんありますが、そこは非常に慎重であって、今後の課題だとされています。こんなに課題がたくさんあると、生きてるうちに終わらないんじゃないかと思いましたが、次の研究者に期待するという意味で記載されているのかとも考えます。森古代学は脈々と受継がれていくとは思いますが、古代史愛好家の皆様には、是非共読んでいただき、実在の有無に関わらず、なぜ記述があるのかという視点で物事を考えようとする精神を味わっていただければと思います。良い本です。(本の写真をクリックいただければ、アマゾンのショップに繋がります。)
Pasted Graphic 4

読みやすさ  ★★★★
着想の奇抜さ ★★★
論理の力強さ ★★★★★