ifの日本史 加来耕三 ポプラ社

歴史は過去の事実であるわけですから、「もしも」というものは存在しませんが、もしもと想像を拡げていくのは本当に楽しい物です。もしも、本能寺の変で織田信長が生き延びていれば、もし、関ヶ原で西軍が勝利していたら、など、知りうる人々の行動を考えるだけでも時間はどんどん過ぎていきます。私は古代史が好きですから、「磐井の乱が成功していたら」「壬申の乱が逆転していれば」「物部氏が蘇我氏を滅ぼしていれば」など、楽しく読まさせていただきました。ネタバレになってしまいますので、個別の「もしも」にコメントを入れませんが、残念だなーと感じたのは、作者の方にとってはその時々の、時代の趨勢を離れることはできずに予測をされていることです。時代の流れが変わらなければ、起こらない出来事が起こっても時間がずれるだけで100年、200年の単位では同じような時代が来ることに成ってしまいます。タイムマシンができて、ある時点の結論がひっくり返ったとしてもタイムマシンで到達した時間帯だけに変化が起こり、全体としての時代や考え方の流れに変動がおきないと考えられるのと同じ捉え方です。せっかく、「もしも」としてないことを想像するのですから、時代の枠を越えた世界を見せて欲しかったです。例えば、「磐井の乱」が成功していたら、現代においても、九州だけは別の国になっていた可能性は結構高いと思うのです。「筑紫国」と「日本国」が存在していたかもしれませんし、「筑紫国」はその地理的要因から、シンガポールのような発展の仕方をしていたかもわかりません。アメリカが重視したのは九州・沖縄でしたから、本州日本は共産国になっていたかもしれません。せっかくですから、そのくらいの飛躍があっても良かったかもしれないと思うのです。(本の写真をクリックいただければ、アマゾンのショップに繋がります。)
Pasted Graphic 4

読みやすさ  ★★★★
着想の奇抜さ ★★★★
論理の力強さ ★★