東日本と西日本 大野晋ほか 洋泉社

今の私達にとっては、日本と言う国があまりにも東京中心に出来上がっているので、全ての情報や文化は東京を中心に放射線状に広がっていく物だと言うイメージがあります。そのためなのでしょうか。古代史を調べらていると、当初、東日本と西日本の違いに大きな戸惑いを覚えてしまいました。中国や、朝鮮半島の渡来人がもたらした文化が、北九州から東へ、東へと広がっていったのだという理解はできても、その拡大がなぜ、名古屋で止まってしまうのかが理解できませんでした。私の中では、その理由は、狩猟民族の縄文人と、稲作文化をもたらした渡来系の弥生人の違いに起因していると整理することにしているのです。そうでなければ、説明がつかないことが多すぎます。
そして、この本を読んでその思いは、より一層強くなりました。この本は、縄文人と弥生人の違いが、東日本と西日本の違いを作ったのだと言うことは一切言っていません。いろいろな視点にたって、東日本と西日本はこんなにちがうのだということを説明している本です。まず、私の好きな大野晋先生の「言葉」の違いの説明があります。私の中では、南方から渡って来た人々の発音と、中国・朝鮮半島から渡って来た人々の発音との違いが息づいているという考えなのですが、非常に面白い言葉の変化の違いの指摘されています。そして、身体の違いに移ります。皆さんはきっと、自分が東日本人か、西日本人かを認識されるのではないかと思います。それ以降は、時代とともに考察がはじまります。遺跡、源平、中世と続いていきます。明治まで到達したあと、宗教、民謡、文学で終わります。時代的には、東西の違いを作った要因として、鎌倉幕府が非常に大きかったのだなーということや、江戸文化がそれまでの日本文化と異次元のものとして作られて被さり、新しい東日本と西日本の違いを作り上げたんだなーということが分かります。少し読みづらい文章もありますが、なかなか、良い本だと思いました。(本の写真をクリックいただければ、アマゾンのショップに繋がります。)
Pasted Graphic 4

読みやすさ  ★★★
着想の奇抜さ ★★★★
論理の力強さ ★★★★